『「常識」の研究』山本七平
先日母のもとを訪ねた。「あなたが好きそうな本がありましたよ」と出してきたのが、山本七平さんの『「常識」の研究』。『空気の研究』の続編のような本著、嬉しい! 学生時代は本を読んでいると「女の子はめがねになったら終わりよ! 電気つけなさい!!」とか「本ばっかり読んで!」と小言をいわれたもんです。普通、子どもが読書してたら喜びますよねお母さん?
最近は勧めてくれる本で、意志を伝えてくるようになった母。「どっちがいい?」とかわいく小首を傾げて『おひとりさまの老後』とお見合い写真を出してきたツワモノでもある。
戦前と戦後で日本人がガラッと変わったことにすごく興味がある。同じ人間がある日を境に価値観を180度変えることなんて、今後起きるんだろうか。
『空気の研究』では、例えば戦争批判をした人に「当時の空気を知らないから」と言われると、ぐうの音も出ないことなど、日本人が「空気」を雰囲気と捉えていて、たかが雰囲気にも関わらず「空気」を出されると全員が押し黙ってしまうほど説得力があるということを研究している。
そして空気をガラッと変えるのが「水」であるとも。例えば出版社で編集者が集まり、こんな会社を辞めてみんなで新しい会社を作ろうと盛り上がるとする。売れる本のノウハウもわかっているし、新人の良い本をたくさん出そう、時代を変えよう! と、「空気」は加熱するものの、「でも、先立つものがなぁ」と誰かがいうと一気に現実に引き戻される。この一言が「水をさす」ことであって、水で空気が一変するという不思議も研究されていた。
母が今回くれたのは常識の研究。……母はなにが言いたいんだ? 私って非常識!? 今年の母の日はなにをプレゼントしようか迷う。