『モンスター』『ソドムの林檎』

『モンスター』『ソドムの林檎』

百田直樹さんの『モンスター』を読んだ。

幼い頃から化け物とののしられるほど醜かった女の子が、全身整形をして美女に生まれ変わり、果たせなかった純真を貫くというあらすじ。

4月27日から特殊メイクをして役に挑んだ高岡早紀さんの主演でロードショーが始まっている。

外見の美醜に左右された女性の人生の話だったが、本書で印象に残ったのは発展途上国の美人という定義。

国が安定するほど”個性”が美として認められ、美しさも多様になってくる。逆に個性のない美はつまらなく映る。

例えばインドの女優さんたちが非の打ち所のない絶世の美女であることは間違いないんだけど、その美しさに対比したちぐなぐな個性を感じられない女優は、先進国の人たちにはどこか物足りなく感じてしまうということ。

どの美女も同じように見えると、かえって全員の魅力が半減する。ミスコンテストにもありがちなことだ。

美女である上、面白かったり、格闘家だったりと、ギャップがあると更に魅力が増すのが先進国の美人。途上国では美人は美人であればよく、他に求められるものは少ない。

国民に金銭的余裕がでてくると、教育もしっかりして女性の美意識も高まって自分なりの美しさを発揮できるようになるんだろうと思っていたとき、希代の毒婦とされた木嶋香苗被告の事件を元にした『ソドムの林檎』のドラマを観た。

木嶋被告を元にした役・宮島恵に扮した寺島しのぶさんは、自分に絶対的自信を持った美しくない被告・恵をミステリアスに演じていた。脚本では整形美女と整形醜女がでてくる。

美しい外見だけが愛されることが嫌になって醜女に整形した恵。

美しくさえなれれば愛してもらえると美女に整形した万里。

恵は本当に男たちを殺したのか、なぜ男たちは醜女の恵を愛して貢いだのか。木嶋香苗事件で注目された疑問が物語の柱だけど、恵と万里が持ったそれぞれの父親への愛情と絡んで感慨深いドラマだった。

醜いはずの恵が男たちに愛されている。自分を殺そうとした女にも関わらず逮捕後も恵の体調を気遣っている被害者。美しくなれば幸せになれるはずだった万里はいつまでも嘔吐をやめられず過食症と闘いながら埋まらない心の空洞に苦しんでいる。

恵は男たちの聖女だった。揺るがない自信は外見の美しさとは関係ない。

自信を持った人間がが強く見えるとしたら。生きる強さを持った人に会うと、その人が近くにいてくれる安心感に依存して離れられなくなるんじゃないだろうか。男たちはそんな恵(木嶋香苗)がそばにいてくれることに依存して、強い恵を喜ばせることができるのは自分だけだという、自分のなかに生まれた”自信”に酔ったのではないか。

女性の美しさと自信について考えた。

本屋大賞を獲得した同じく百田さんの『海賊と呼ばれた男』を友人から借りれることになった。こちらも楽しみ。

PHOTO FROM READING LADY