話題作・又吉さんの『火花』。思わず涙が出る場面もあるくらいのめり込むページもあり、即完読。夜中にデザイナーさんからの修正を待ちながら読んだという思い出つき。涙の意味は違えど、まさか泣きながら修正を待っていたとは思っていないだろう笑。静かな夜だったから余計に楽しめたのかな。夜中に起きていること自体、最近はなくなったし。
いい、めっちゃいいです! 読後感は清々しい。きっと純文学好きな方は処女作ならではの未完成感にわくわくするはず。未完成感というのは私が勝手に感じているもので、エッセイと小説の間になっているところとか、構成にばらつきがあるということ。
あ、ここはたぶん一気に書いたな、とか、わ、改行効いてる! とか。ここでひらく(漢字をひらがなにする)か〜うまいな〜! とか。独特の呼吸が聞こえるようなリズムがあって、小説を書き慣れてきたらもっと上手に呼吸を操るようになるんだろうなという感じ。どうしたら心象を描ききれるかを探りながら執筆しているのを、読みながら感じ取れる感じ。本好きだからこそ「いいね!」と言ってしまうこの感じ。
ん〜……。なんだか未完成感が伝わりにくくなってしまった。要するに、読み続けるのが辛いという意味の未完成ではないということ。本書のリズムに乗ってページをめくるのは苦にならない。それどころか安心して先導してもらえる感じ。でもきっと次回作からはもっと洗練されるんだろうなと思うと、この感じがなくならないで欲しいと思ったりもする。
又吉さんはたくさん本を読んで、自分でいろいろ考えてきた人なんだなというのが伝わってきた。世の中には「自分で考える」人が少ないとも思う。観察したことを文章でしっかりと表現できてうらやましい。芸人さんの書いた本という色眼鏡を外して、一度は手に取って欲しい一冊。
否定派もいるようだけど、肯定派として私の好きな評論家・宮崎哲弥さんの批評も載せる。これで読んでみようと思う人が増えてくれますようにと思う威を借りる狐でした。
<一見芸人の師弟関係の話なんだけれども、そういったストーリーラインだけを追うものではなく、そこはかとなく伝わってくる描写の良さ、人生の理由もない悲しみを描写するのがすごく旨い。純文学として遜色のない作品。/宮崎哲弥>