『12 years a slave』邦題:それでも夜は明ける

『12 years a slave』邦題:それでも夜は明ける

歴史は繰り返す。この言葉が悪趣味な方向に使われませんようにと思うのは、こういう映画の観賞後。舞台は1841年のニューヨーク。奴隷ではない自由市民として生まれた黒人男性が誘拐され、12年間におよび奴隷になる壮絶な物語だ。

目が覚めたら鎖につながれ、名前も地位も名誉も取り上げられ、家族とも連絡が取れず、お前は奴隷なのだとムチを打たれる。どんなに人違いだと訴えても誰も耳を貸さない。こんな不当なことが万が一自分の身に起こったらと思うと、誰でもぞっとするだろう。もっとも胸が締め付けられるのは、これがそう遠くない昔に起きた実話だということ。

活躍するあの美人黒人歌手も、アカデミー賞を穫ったあの黒人女優も、あのエキゾチックな外見が出来上がる過程には、どこかで白人のマスターに犯されて出来た子供の末裔かもしれないのだ。違いますように、または苦しんだ人がいませんようにと祈るしかない。

アメリカのお笑いの中でも、黒人コメディはとりわけ人種をネタにしたものが多い。黒い肌は、数代さかのぼった祖先は奴隷だったという歴史を物語っているのだから、笑いのネタにして悲しい歴史を受け入れるしかないからだろうか。

自分が白人でないのをいいことに、黒人コメディも自虐の視点で観て一緒に笑ってしまう。美白が白人至上主義につながるとは思わないけれど、アジア人が持つコケイジャンへの憧れも、ある意味自虐から始まっているのかも。うがった見方かな。

映画はとっくに公開されているし、賞を総なめした話題作だから観た人も多いでしょう。まだ観ていない人は、時間がある時に細部まで目を凝らして観てほしい映画のひとつ。人生で1回は観ておいたほうがいいと思う。

これが↓公開されている中で、一番いいトレーラーだと思うんだけど、埋め込めなかったので未鑑賞の人はクリックしてみてください。

http://www.imdb.com/video/imdb/vi4088309785/